正直 BOOK 2 はあまり楽しめなかった。BOOK 1 では思う存分羽ばたいていた想像力の翼が、村上春樹自身がリーダーの預言に支配されたかのように、普遍化することの不可能な、青豆と天吾二人の特殊な愛の物語に縮まってしまったように思えたからだ。とはいえ、「BOOK 3はたぶんない」と書いたのにBOOK 3が発売されてしまった負け惜しみでいうのではなく、物語としては、BOOK 2で十分完結していたと思う。だから、これはBOOK 2 でバッドエンディングになってしまったところからやり直したリプレイといえるかもしれない。 ...
日本語が母語でよかった。 上下巻でなくBOOK 1、BOOK 2 なのはひょっとして BOOK 3 がありうるということを示しているのではないかと思ったが、これは、小説の中で言及されるバッハの平均律クラヴィーアの構成を模倣しているためだった。平均律クラヴィーアは、24の前奏曲とフーガがメジャー、マイナー交互に配置されていて、同様の構成のものがBOOK 1、BOOK 2 の二巻作曲されている。『1Q84』も、BOOK 1、BOOK 2 それぞれが24の章から構成されていて、青豆と天吾、二人の男女それぞれが交互に主役を務めるという感じで、完璧に対応がとられている。だから、BOOK 3はたぶんない。 ...