お布団『XXXX(王国を脅かした悪魔の名前)』

駅から15分離れたマイナーな劇場だったこともあってか、道案内をかねて前提知識を解説する音声コンテンツが配布されていた。これは開演してすぐに世界観に入り込めるのでとてもいい試みだと思う。 ...

はえぎわ『幸子っていうんだほんとはね』

なんと15年ぶりのはえぎわ。 セットのない素舞台に役者が勢揃いしてバックステージツアーのシーンからはじまる。空っぽの舞台にたくさんの役者。そのアンバランスさにかすかに不安になるがちゃんと物語が始まった。 ...

ポール・オースター(柴田元幸訳)『4 3 2 1』

2024年4月に亡くなったオースターが2017年に完成させた最後から2つ目の長編小説。800ページ弱、厚さ4.5cm、重さ1キロある大著。持ち運ぶだけで一苦労だった。読後感には重さからの解放感が含まれてしまう。 ...

ヌトミック『何時までも果てしなく続く冒険』

初ヌトミック。4年ぶりの新作長編とのこと。生演奏の音楽が全面に出るところが特長でまさに音楽劇だ。基本モノローグで進行するので最初はチェルフィッチュの音楽特化版かと思った。でも社会批評性はないし、語られるストーリーはそこまで整理されてなくて荒削りな状態だ。 目指す方向性が違うようだ。 ...

『終点 まさゆめ』

今年初観劇。 安楽な老後生活が送れるという惑星《まさゆめ》に宇宙船で向かう船長一人と乗客7人。ところが事故で燃料が流失し1人を放出しなければいけなくなり、まさゆめの生活でで一番役に立たない人を民主的に話し合いと投票で決めることになる。 ...

ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン(鬼澤忍訳)『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源』

訳書は上下巻に分冊された大部だが、伝えている主張はこの上なくシンプルだ。ほとんどの紙幅は実例を挙げての検証に費やされている。その主張は、繁栄する国家と衰退する国家を分けるのは、地理的要因でも文化でも、知識の有無でもなく、制度である、と一文で表現できてしまう。 ...

シス・カンパニー『桜の園』

シス・カンパニーとケラリーノ・サンドロヴィッチによるチェーホフ4大戯曲上演もいよいよ4作目。ぼくは最初の『かもめ』以外の3作をみたことになる。もともと『桜の園』は2020年4月に上演するはずがコロナのせいで中止になりようやくキャストをいれかえて上演することになったのだ。 ...

スヌーヌー『海まで100年』

「静かな時間。今ここには誰もいない・の・ではないかと思う」という語りからはじまる3人の登場人物の朝の心象風景が語られる。彼らは横浜市鶴見区大黒町の物流センターに派遣社員として働いているという共通点がある(ちょうどそのあたりを通って劇場にたどりついたので奇遇な気がした)。彼らの物語るのは実際に起きたことではなく頭のなかで想像してみたこと、ひょっとするとこれから起きるかもしれないこと、そして決して起きないだろうことだ。 ...

城山羊の会『平和によるうしろめたさの為の』

フランス映画にありそうなセックスコメディー。ニュータウン的な地域の小さな公園が舞台。そこに6人の男女がかわるがわるやってきて、公共の場にも関わらず時々隠微な絡みが発生する。彼らの関係性は徐々に明らかになり、まず観客だけが共有する。それを知らない登場人物たちを見ながら観客はやきもきするという展開だ。 ...

テアトロコントspecial『寸劇の庭』

3つの団体による。短編2つ、中編ひとつのコント集。ジャンルでいうとどれもナンセンスコメディー。浮世離れした毒にも薬にもならない笑いのはずで、まあそういうのを求めてもいたのだが、今回はこのジャンルがあまりにピッタリ世の中とリンクしていて驚いた。今やナンセンスコメディーをやるだけで鋭い批評やメタファーになる時代なのだった。 ...