フィリップ・ロス(柴田元幸訳)『プロット・アゲンスト・アメリカ』

タイトルを直訳すると「アメリカに対する陰謀」。1940年のアメリカ大統領選で例外的な三選を目指していたローズベルトではなく、共和党から立候補したリンドバーグが勝利するというもの。今では大西洋無着陸飛行の英雄としての側面しか伝えられていないけど、実際、彼は反ユダヤ、白人優位主義者で...

フィリップ・K・ディック(浅倉久志訳)『高い城の男』

第2次大戦で日本、ドイツなどの枢軸国側が勝利した世界を舞台にした歴史改変もの。戦争終結が1947年で、この小説の中ではそれから15年後の1962年のアメリカだ。アメリカは3分割され、東部はドイツの傀儡国家で、西海岸は日本の傀儡、中西部は緩衝地帯になっている。ドイツは戦争に勝利して...

キース・ロバーツ(越智道雄訳)『パヴァーヌ』

エリザベス一世が1588年に暗殺されたことによってローマカトリック教会が力を盛り返しそのまま20世紀後半まで西側世界や新大陸を支配し続けたらという歴史改変SF。イングランド南西部のドーセット地方を舞台に、この小説が書かれた1968年から4世代に渡る年代記的に物語は展開する。 この物...

矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん』

アテンション・プリーズ。太平洋戦争敗北後、日本は長大な壁で東西に分断され、西は難波商人マインド全開の資本主義国家、東は一党独裁の共産主義国家になっていた。なぜか明示はされないけどたぶん1994年、昭和天皇の崩御に伴って、壁は音をたてるように崩れてゆく。その模様を伝えるために日本に...

スティーヴ・エリクソン(柴田元幸訳)『黒い時計の旅』

本土の船着場とダヴンホール島を行き来するあいだ、いつも一瞬だけ、船着場も島も見えなくなる瞬間があった。その瞬間には、霧に包まれて水上に浮かぶ彼の船以外、もはや何ひとつ存在しなかった。空から太陽がなくなっても。国と名のるものがすべて消滅してしまっても、何も変わりはしなかっただろう。...