舞城王太郎『みんな元気。』

みんな元気。

竜巻とともに空を飛べることのできる一家がやってきておたくの末の娘朝ちゃん(彼女も空を飛べる)とうちの息子を交換したいと申し出てくる。すったもんだの末最終的には、朝ちゃんの意志でその交換は成立することになる。

舞城王太郎の小説には、まるでレーシングゲームをしているときのように、荒れ狂うような想像力の奔流をたくみにドライブする快感がある。

今回そのコースをことさら曲がりくねらせてスリリングにしているのは、透明魔人の存在だ。見えたり見えなかったり、変幻自在で人によって別のものに見えたり、倒すべき敵だったり、仲間だったり、有限の選択肢をおしつけてきたり……。今書いてて気がついたのだけど、これって家族、というか個々人が心の中にもっている家族のイメージのことではないかと思えてきた。

面白かったのが、空を飛ぶ家族の姓がぼくと同じだということで、自分の姓に愛着をもったことは一度もなかったぼくだが、今回ばかりはにんまりとしてしまった。しかも、その家族の中のひとりが独立して空飛ぶ探偵として売り出し、ジェット○○と名乗るのだ。