中瀬航也『シェリー酒 知られざるスペイン・ワイン』

シェリー酒―知られざるスペイン・ワイン

シェリーはイギリスのドラマをみているとかなりの頻度で登場する酒で、パブでビール、家でシェリーという感じで飲まれている。たまたま飲んでみたら、さわやかな香りとぴりっとした味わいがすっかり気に入ってしまった。そのとき飲んだのは淡い黄色の「フィノ」と呼ばれるタイプで、その後褐色で梅酒のような濃厚な甘みのある「クリーム」というタイプのものを飲んで、その奥深さに驚かされたのだった。とはいうものの、シェリーについてはスペイン産で、ブドウから作られて、アルコール強化されているという以上のことは知らなかった。せめて基礎的なことくらいは知っておこうと本書を手に取った。

シェリーはスペインのへレスという町を中心とした地域で作られていて、このヘレスの英語名がシェリーなのだそうだ。ブドウの品種は三種類(すべて白ブドウ)に絞られていて、その中でもパロミノが大部分を占めるらしい。

熟成度別に樽の世代が複数に分かれていて、今年とれたブドウからできたワインが一番若い樽に足され、そのあと若い樽から熟成が進んだ樽へと徐々に移し替えられてゆく。タイプによるが少なくとも3年以上かけて完成する。こういうシステムなのでワインのような何年ものというヴィンテージは存在しない。劣化を防ぐために途中の行程でブランデーが加えられるが、シェリー自体の度数は決して高くなく、14~18度程度。ふつうのワインとそれほど変わらない。

シェリーのタイプは30以上もあるそうだ。大きく分けると、辛口のフィノのタイプと、濃厚なオロロソ、中間タイプのアモンティリャードの3つ。フィノの独特の香りや味わいはフロールという酵母の膜によるもので、ほかのタイプではあえてフロールが作られないようにしているとのこと。

巻末にはシェリーのカタログがついていて、実用的だ。

★★